貿易取引ではさまざまな書類が発行され、輸出入者の間でやり取りされます
それらの書類を「船積書類」と呼びます
貿易に携わるうえではそれぞれの書類の役割をきちんと理解しておくことが不可欠です
「全ての取引において全ての書類が必要」という訳ではなく、取引によってどの書類が必要かは異なります
船積書類の種類
運送状
荷物を輸送会社に引き渡したら運送状が発行されます
「輸送会社が運送を引き受けましたよ」という証明書のようなものです
日本国内で荷物を送るときにも、発送手配が完了したら運送状の控えが手元に来ます
それと同じような役割をするのが運送状です
運送状には引き渡した荷物の詳細や便名や行先などが記載されます
発行元:輸送会社(船会社や航空会社など)
記載内容:運送の詳細(荷物、便名、行先(仕向港)など)
運送状の種類
運送状にはいくつか種類があります
船荷証券(B/L)
- 海上輸送で使用される
- 有価証券として流通する
海上運送状(Sea Waybill)
- 海上輸送で使用される
- 有価証券ではない
航空運送状(Air Waybill)
- 航空輸送で使われる
- 有価証券ではない
B/LとWaybillって何が違うの?
一番大きな違いは、その書類で「貨物の受け取りができるかどうか」だよ
B/Lは見せないと貨物の引取りができないけど、Waybillなら見せなくても貨物の引取りができるんだよ
インボイス(Invoice)
インボイスは輸出者が発行するものです
発行元:輸出者
記載内容:貨物の内容や金額など
インボイスの種類
インボイスにはいくつか種類があります
種類ごとに役割が異なります
それぞれ役割ごとに別のインボイスを作ることも可能ですが、基本的には一つのインボイスが兼用されることが多いです
例えば輸出者がコマーシャルインボイス兼カスタムインボイスとして1種類のインボイス発行します
そのインボイスは輸出地での輸出通関でも使われるし、輸入者への請求書としても使われるし、輸入地での輸入通関でも使われることになります
コマーシャルインボイス(Commercial Invoice)
- 輸入者に対して何を出荷したのかお知らせする役割
- 輸入者宛てに商品代金を請求する役割
- (L/C決済の場合は)銀行にL/C通りに出荷しているかお知らせする役割
カスタムインボイス(Customs Invoice)
- 輸出入の際に税関に申告する役割
- 日本の税関では「仕入書」と呼ばれている
「カスタム」って「習慣」とか「風習」っていう意味ですよね?そのインボイスってどういうこと??
「カスタム」には「習慣」っていう意味以外に、「税関」という意味もあるんだよ
“custom office”は「税関」のこと、”custom officer”は「税関職員」のことだね
コンシュラーインボイス(Consular Invoice)
- 商品価格が適切である(不当に安く売られていない)ことを証明する役割
- アフリカや中南米の一部の国へ輸出するときに必要になる
コンシュラーインボイスは買い手(輸入者)の依頼により発行します
- 買い手(アフリカや中南米の輸入者)からコンシュラーインボイスの発行を依頼される
- 売り手(日本の輸出者)は日本国内の大使館・領事館より査証(ビザ)を受ける
- 売り手(輸出者)から買い手(輸入者)へ査証を受けたインボイスを送る
プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)
- 輸入者に対して見本として送る「仮」のインボイスの役割
- 仮インボイスなので厳密には船積書類ではない
プロフォーマインボイスはどういうときに発行されるのですか?
「事前に輸入者がインボイス内容をチェックしたいとき」などに活用されます。
輸出者が輸入国の制度に精通しておらず発行されたインボイスに不備や記載モレがあると貨物が到着しても通関できずに時間を無駄にすることになります
そのようなトラブルを避けるために事前にプロフォーマインボイスを発行し、輸入者が内容を事前チェックします
保険証券(Insurance Policy)
輸出者 or 輸入者の依頼により保険会社が発行します
発行元:保険会社
記載内容:付保された保険条件など
輸出者・輸入者のどちらが保険付保するかは契約によって決まっています
輸出者が保険付保することになっている契約条件の場合は、輸出者が保険を手配して保険証券を輸入者に送ります
輸出者が保険付保する契約条件はCIF、CIPです
DAP、DPU、DDPも輸出者が保険付保することが多いです
DAP、DPU、DDPは輸出者に保険付保の義務はありませんが、リスクの移転は輸入地でされるため、輸出者は自分のリスク回避のために保険をかけるのが一般的です
通常はリスクを負担する方が保険を付保するのが一般的です
どちらがどこまでをリスク負担するかは契約で決まっています(インコタームズを用いることが多いです)
インコタームズについてはこちらの記事もご参照ください
パッキングリスト(Packing List)
パッキングリストは輸出者が発行します
インボイスに記載しきれなかった梱包の明細について記載します
発行元:輸出者
記載内容:貨物の梱包明細(容積・重量・パッケージ数など)
インボイスやパッキングリストに記載されている”E. & O.E.”とは?
インボイスやパッキングリストなど輸出者が作成する書類の末尾に“E. & O.E”と記載されていることがあります
これは”Errors and Omissions are Excepted.”(誤記脱漏はこの限りにあらず)の略で「誤字脱字があっても勘弁してください」と免責を求める表現です
実際にはこの記載があっても免責にはならないので最近は記載されないことも多いです
検査証明書(Certificate of Inspection)
輸出貨物の品質や規格・基準を満たしていることを証明するための書類です
常に必要な書類というわけではなく、輸入者の依頼によって発行されることが多いです
輸入者から依頼があれば、輸出者が検査機関などに依頼し発行してもらいます
発行元:検査機関など
記載内容:検査の結果や合否など
容積重量証明書(Certificate and list of Measurement and/or Weight)
輸出貨物の重量や容積を証明するための書類です
こちらも常に必要な書類というわけではありません
輸入者や輸出者が検量機関に依頼し発行されます
発行元:検量機関など
記載内容:梱包事の重量・容積・総重量など
検量ってなぜ必要なのでしょうか?
輸入者が貨物を受け取ってから数量が少ないことが発覚した場合は、そもそも輸出者が少なく出荷していたのか or 輸送中に減ったのか が分からなくなってしまいます
そのようなトラブルを避けるために輸出者が適切な数量を出荷したことを証明するためにも発行されます
原産地証明書(Certificate of Origin)
どこの国・地域で生産・製造されたのかを証明するための書類です
こちらも常に必要な書類というわけではありません
輸入国で低い関税を適用したい場合や輸入制限外であることを輸入国で証明したい場合などに発行されます
原産地証明書にはいくつか種類があるので、どの原産地証明書が必要かは事前に明確にしておく必要があります
原産地証明書についてはこちらの記事もご参照ください
発行元:輸出国の官公庁や商工会議所
記載内容:原産地(どこの国・地域で生産されたか)など
どの書類が必要か契約で明記しておきましょう
船積書類にはいくつか種類があります
毎回すべての書類が必要というわけではなく、取引によってどの書類が必要かは異なります
必要書類は契約に明記されることが多いです
必要部数も契約書に記載します
- 1通で良いとき:書類名のみ
- 2通必要なとき:[書類名] in Duplicate / [書類名] in 2 copies
- 3通必要なとき:[書類名] in Triplicate / [書類名] in 3 copies
- 4通以上必要なとき:[書類名] in [必要部数] copies / [必要部数] copies of [書類名]
貿易実務担当者としてはそれぞれの書類がどういう役割なのかを理解し、契約で適切に明記し、出荷時には遅延なく準備できるようにしましょう
まとめ
国内取引に比べると貿易取引ではやり取りされる書類の種類が多いです
また基本的に英語での表記になりますので、慣れるまでは複雑に感じる方も多いかもしれません
取引によって必要書類は都度異なりますので、どのような書類があるのか・何のために発行されるのか頭に入れたうえで業務を進めていきましょう
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