関税とは輸入品にかかる税金のことです
関税は基本的に輸入国のルールで算出されます
日本での関税の計算方法
日本では課税標準と関税率の2種類の数字を掛け合わせて関税額を算出しています
関税の計算方法
関税額 = 課税標準 × 関税率
計算された関税の金額は、輸入許可後に発行される輸入許可証に記載されます
課税標準
課税標準とは「税金を計算するときの基になる金額」のことです
関税を計算する場合の課税標準は、基本的に輸入申告時の貨物の価格や数量になります
輸入申告をした時の貨物の価格or数量に基づいて関税の金額が決められるんですね
輸入申告時の貨物の価格が課税標準になるものを「従課税品」、輸入申告時の貨物の数量が課税標準になるものを「従量税品」といいます
従課税品
従課税品の場合は、輸入申告時の貨物の価格が課税標準となります
「輸入申告時の貨物の価格」は通常CIF価格で計算されます
CIF価格とは貨物本体の価格だけでなく運賃や保険も含めた金額です
また、輸入申告時に外貨で価格建てがされている場合は税関の公示レートを使って円換算されます
例)税関の公示レートがUSD 1.00 = 100円のときの関税額は?
1. インボイスに記載の金額がCIF USD 100.00なら
→10,000円が課税標準
【計算方法】USD 100.00 x @100 = 10,000円
2. インボイスに記載の金額がCFR USD 100.00なら
→11,000円が課税標準
【計算方法】(USD 100.00 x @100) + 保険料 JPY 1,000 = 11,000円
3. インボイスに記載の金額がFOB USD 100.00なら
→12,000円が課税標準
【計算方法】(USD 100.00 x @100) + 保険料 JPY 1,000 + 国際運賃1,000 = 12,000円
CIF, CFR, FOBなどのインコタームズについて知りたい方はこちらの記事もご参照ください
従量税品
従量税品の場合は、輸入申告時の貨物の数量が課税標準となります
ほとんどの貨物は従価税品ですが、アルコール類や石油類など一部の品目が従量税品です
関税率
関税の金額は「課税標準」と「関税率」の2種類で計算されます
関税率は貨物の種類や輸出元の国によって変わってきます
貨物の種類(品目分類)
すべての貨物に対して、貨物の種類ごとに関税率が設定されています
貨物の種類は材質や機能、性質などによって21のセクションに分類されています
この分類のことを「品目分類」といいます
品目分類は10桁のコードで示されます
このコードは「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められているので「HSコード」と呼ばれます
関税率の種類
貨物の種類(品目分類)だけでなく、輸出元の国などによっても関税率が変わってくることがあります
関税率には次のような種類があります
基本税率
全ての貨物に対して、貨物の種類ごとに設定されている基本的な関税率です
他に適用する税率が無ければこの基本税率が適用されます
基本税率については関税定率法で定められています
暫定税率
特定の品目に対して適用される関税率です
暫定税率については関税暫定措置法で定められています
暫定税率が定められている特定の品目は基本税率の代わりに暫定税率が適用されます
協定税率(WTO協定税率)
WTO加盟国を原産地とする輸入貨物に適用される関税率です
WTO協定で定められています
特恵税率(一般特恵税率)
開発途上国のうちの指定国(特恵受益国)を原産地とする輸入貨物に適用される関税率です
関税暫定措置法で定められています
特別特恵税率(LDC特恵税率)
特恵受益国のうち、後発開発途上国(LDC)を原産地する輸入貨物に適用される関税率です
関税暫定措置法で定められています
LDC = Least Developed Countryの略です
開発途上国の中でも特に開発が遅れている国々のことで、国連で定められています
経済連携協定税率
日本と経済連携協定(EPA)を締結した国を原産地とする輸入貨物に適用される関税率です
それぞれの条約ごとに定められています
日本が締結している経済連携協定(EPA)の例
- 日・シンガポールEPA
- 日・メキシコEPA
- 日・マレーシアEPA
- 日・チリEPA
- 日・タイEPA
- 日・インドネシアEPA
- 日・ブルネイEPA
- 日ASEAN・EPA
- 日・フィリピンEPA
- 日・スイスEPA
- 日・ベトナムEPA
- 日・インドEPA
- 日・ペルーEPA
- 日豪EPA
- 日・モンゴルEPA
- TPP12(環太平洋パートナーシップ)
- TPP11(包括的・先進的TPP協定)
- 日EU・EPA
- 日米貿易協定・日米デジタル貿易協定
- 日英EPA
- 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 など
詳細は最新情報をご確認ください
その他にも交渉中のEPAもあります
EPA = Economic Partnership Agreement の略です
関税率の適用順
上記のとおり、関税率にはいくつか種類があります
複数の関税率が適用できる貨物の場合は以下の順番で適用されます
- 経済連携協定税率
- 特別特恵税率(LDC特恵税率)
- 特恵税率(一般特恵税率)
- 協定税率(WTO協定税率)※協定税率<基本税率・暫定税率の場合のみ
- 暫定税率
- 基本税率
【注意】
協定税率(WTO協定税率)は「協定税率<基本税率・暫定税率」の場合のみ協定税率が適用されます
※「協定税率≧基本税率・暫定税率」の場合は基本税率・暫定税率が適用されます(暫定税率が設定されている場合は暫定税率が優先適用)
なお、基本税率・暫定税率以外の関税率を適用する場合には原則として原産地証明書が必要です
原産地証明について知りたい方はこちらの記事もご参照ください
まとめ
関税金額は「課税標準」と「関税率」によって変わってきます
「課税標準」は貨物の価格or数量によって決まります
「関税率」は貨物の種類&輸出元の国によって決まります
輸入申告後、輸入が許可されると「輸入許可証」が発行されます
輸入許可証に関税額が記載されていますので、受け取ったら一度ゆっくり見てみることをオススメします
慣れるまではややこしく思うかもしれませんが、関税の計算方法が分かれば輸入許可証に記載されている内容をより深く理解することができると思います
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